第三章 きれいな結晶を求めて(特別編)
今年の3月以来、いろんな方法できれいで大きい結晶の作り方について試してみました。その中からいくつかを紹介します。
< ペットボトルの密度拡散法 >
利安さんが「おもしろ実験 ものづくり完全マニュアル」で紹介している方法を500mlのペットボトルで試してみました。(*4)
この方法は、数ヶ月かけてゆっくり結晶を成長させる方法で、透明な結晶を連続して成長させることができます。また、途中のメンテナンスも楽で、無精な人にはお勧めの方法です。
500mlのペットボトルの上部をカットし、細長い容器を作り飽和水溶液で口近くまで飽和水溶液を入れます。次に材料になるミョウバンの結晶をストッキングで包んで上部に固定します。このとき、私は、針金を使って固定しました。
種結晶は、形が良い大きめのものを使います。第一章で紹介した方法で作った結晶を使うと良いでしょう。これをペットボトルの下部に吊します。ペットボトルの上部はラップなどでふたをしておきます。
あとは、装置を水を入れた水槽に入れ静置するだけです。このとき、水槽の水面が種結晶の少し上になるようにします。
途中のメンテナンスは、外の水槽の水が減ってきたら追加し、上部の結晶が減ってきたら追加する程度です。また、しばらくすると下部に多量の結晶が溜まってきます。これは、お湯に浸けてから取り出します。ペットボトルは130℃ぐらいまで耐えられますので沸騰したお湯でも可能です。
利安さんは1年半で一辺が8cmくらいの395gの完全に透明な結晶を作成したそうです。
これから、私は1.5リットルのペットボトルを使って大きな結晶作りに挑戦したいと思っています。
< 結晶の原理 >
水槽の水は、表面からの蒸発で室温より2〜3℃低くなります。ペットボトルの上部はふたをしているので室温と同じで、下部より若干温度が高くなります。そこで高温の上部で結晶が溶解し、密度が高くなって液が下降し、低温の下部で結晶が成長しやすくなります。
締め切った夏の理科室でもどうにか大丈夫でした。直射日光の窓側に置いたものは、縞模様になりましたが成長は早めです。安定して結晶を成長させるには、風通しの良い静かな場所に置くことが大切でしょう。
ペットボトルを水槽に浸けなくても、昼夜の気温差だけでも成長するかも知れませんが未確認です。これができると理科室の展示用として最高ですね。
<水槽とヒーターを使った密度拡散法>
ペットボトルと同じ原理で熱帯魚用のヒーターと水槽を使って結晶を作る装置を作りました。この方法は、温度の調整が自由にできるので成長速度をコントロールできます。また、水槽を使っているので結晶の成長状況がよく観察できます。200g級の大きな結晶はこれで作りました。
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プラスチックの水槽
:普通の水槽です。
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熱帯魚用のヒーター
:IC温度センサーがヒーターと一体になって内蔵しているもので、外部で温度設定がコントロールできるものが良いです。今回使用したのは、「ニッソー New IC オート 150」です。
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温度計
:下部の温度を調べる。2本あるときには上部用にも置く。
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吸盤
:ヒーターなどを固定するために使う
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原料の結晶の入れ
:1リットルの四角いペットボトルに窓を数カ所開け、中にストッキングを貼って作成しました。
種結晶にテグス糸を付け、ヒーターよりも下部になるように吊します。糸の上の部分は、発泡スチロールで固定し、水面に浮かせると便利です。水槽を利用するので、複数の結晶を同時に育成できます。
夏は、気温が高いのでコントロールしにくいです。
<寝かせ式ミョウバンの結晶育成法>
この方法は、1987年に鈴木栄作さんたちが作りだし、その後、山田芳子さんが追試した資料「たのしい結晶作り」(*1)に紹介されました。
これは、プラスチックの容器に飽和水溶液を入れ、水を自然に蒸発させて結晶を育成する方法です。結晶は容器の底の部分にそのまま並べて置き、毎日飽和溶液を入れ替え、結晶の向きを替えてやります。
7月の「青少年のための科学の祭典」では、山田さんが1g(1週間)〜1kg(5年間)の結晶を展示されていました。さっそく、家に帰って始めてみました。夏は、外出時の締め切った部屋では高温になることも多く、角が丸く溶けたりして、1ヶ月ぐらい経っても1cm程度しか成長しませんでした。一度溶け出すと、結晶の透明度が落ちます。
9月に入り、神崎さん(県立教育センター)から、電動ファンを頂き、専用の結晶育成箱を作成しました。これは、発泡スチロールの箱に電動ファンを取り付け、箱の中を強制的に換気して水を早く蒸発させるものです。当初は、家で結晶を育成させていたのですが、ファンの音がうるさいので、学校の理科室へ移動しました。しばらく装置を動かしてようすを観察したいと思います。
電動ファンがあると、気温の変動に影響されずに順調に結晶が成長していきました。この方法の最大のメリットは、結晶が、角が尖ったきれいな正八面体になることです。また、狭いスペースで糸を付けずに多数の結晶を育成でき、余分なミョウバンも少なくてすみます。
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