ダイオキシンとは?
神奈川県平塚市  2000.1.24

 人間が作りだした、最悪の物質。それはダイオキシンです。でも、それを作っているのはみなさん自身です。一人ひとりがこの問題に真剣に取り組む必要があります。これは、「ダイオキシン」の授業の記録です。バイルシュタインテストで塩素を含むプラスチックも調べました。

 


ダイオキシンの影響?
ベトちゃんとドクちゃんは2人がくっついて生まれました。これがダイオキシンの影響かどうかははっきりしませんが、ダイオキシンによって奇形児の発生が多くなることは確かです。

バイルシュタインテスト
熱した銅線をプラスチックに付けてから再び炎の中に入れると塩素を含むプラスチックかどうか調べることができます。ダイオキシンは、炭素・水素・酸素・塩素でできています。

塩素を含むプラッスチック
塩化ビニル(消しゴム・ゴムボール・ビニールテープなど)や塩化ビニリデン(ラップフィルム)

塩素を含まないプラスチック
ポリエチレン・ペットボトルなど

 

 まず、2つの質問をしました。

・自分のからだの中にはダイオキシンがある。 ○=12人 ・ ×=9人
・落ち葉を燃やすとダイオキシンができる。   ○=4人  ・ ×=13人

 答え合わせは、後回しにして、あとは、資料を読み、簡単な実験へ

------------------生徒配付資料------------------------
★ダイオキシンについて

○ダイオキシンとは?
 炭素・水素・酸素・塩素の化合物で、現在、200種類以上がダイオキシンの仲間に入れられています。このダイオキシンの中で、最も毒性が強いものは、次のような分子構造をしています。
      <構造式は省略>

○ダイオキシンの毒性は?
 ベトナム戦争の時に不純物としてダイオキシンを含んだ枯葉剤が使われ、多数の奇形児が発生しました。日本ではカネミ油症事件(1968)で食用油に機械からもれ出したダイオキシンを含むPCBが混入し、2万人近い患者が出ました。全身の皮ふに吹き出物ができたり、毛穴の色が黒くなったり、中には全身が黒い赤ちゃんも産まれてきました。事件から30年以上たっても、自分の体のできものの穴から膿みをしぼり出しながら、やはり患者である娘を介護して暮らしているお年寄りがいたそうです。一度体内に取り込まれたダイオキシンは、ずっと体内に残り続けるのです。
      <ベトちゃんドクちゃんの写真は省略>

○サリンと比べた毒性
 ダイオキシンをモルモットに食べさせたときの致死量は体重1kg当たり0.0000006gです。これは青酸カリの2万倍、サリンの数倍の強い毒性を持っていることになります。しかし、人の致死量や、ごく長期にわたる影響などは充分に解明されていません。最近、少量でも、発ガン性があることや胎児の死亡
や先天的な異常、ウィルスに対する抵抗力の低下などの影響があることが少しずつ分かってきています。
 アトピー性皮膚炎はこの20年ぐらいで7倍に増えてきています。ダイオキシンもその原因の一つとして強く疑われていますが、詳しくは分かっていません。

○ダイオキシンはどこにあるの?
 ダイオキシンは、大気や土・水など、私たちの身のまわりのいたるところに存在しています。このダイオキシンの濃度は、よくピコグラム(100万分の1グラム)などの単位で表されます。これは最新の技術を使ってやっと測定できるぐらいの低濃度です。でも、ダイオキシンは、一度体内に入ると排出されたり分解されたりすることはなく、少しずつ体内に蓄積されていきます。

○ダイオキシンはどこから入るの?
 ダイオキシンは、身のまわりのどこにでも存在しています。水を飲んだり息をしても体内にダイオキシンが入ってきます。都市部に生活している成人は、1日当たり200ピコグラムのダイオキシンを取っていますが、そのほとんど(90%以上)は野菜や肉・魚という食品の形で体内に入ってきます。
 ダイオキシンは、油に溶けやすく水には溶けにい性質があります。植物プランクトン→動物プランクトン→小魚→大きな魚と食物連鎖が上位のものに行くにしたがってダイオキシンの濃度もだんだん濃くなっていきます。

○ダイオキシンはどうして発生するの?
 昔使われていた、農薬などにふくまれていたダイオキシンがいまだに土の中や水中に残っています。また、ごみの焼却によってダイオキシンが発生することが分かってきました。塩素をふくむプラスチックなどが焼却炉の中で化学変化をしてダイオキシンを発生することが分かってきました。そこで、ごみの分別収集をしたり、焼却場では燃焼温度を上げることでダイオキシンの発生が少なくなるようにしています。

【実験】塩素をふくむプラスチックを調べる

・目的:塩素をふくむプラスチックかどうかを調べる。
・方法:(バイルシュタイン・テスト)
 @ 割り箸をの先に銅線を付けたものを用意し、銅線の部分を炎の中に入れ、青緑色の炎色反応が消えるまでよく焼く。
 A 熱い銅線の先を調べたいプラスチックに付け、再び、炎の中に入れる。塩素をふくむプラスチックの場合は、青緑色の炎色反応が見られる。

・結果:
 ポリエチレンの袋 ×(炎色反応なし=塩素を含まないプラスチック)
 消しゴム      ○(炎色反応がある=塩素を含むプラスチック)
 サランラップ    ○
 ペットボトル    ×
 ビニールコード  ○
 ビニールテープ  ○
 ・・・・

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<答えあわせ>
・自分のからだの中にはダイオキシンがある。 →答えは○
 本文にもありましたが、毎日200ピコグラムぐらいずつ体内に入ってきます。

・落ち葉を燃やすとダイオキシンができる。   →答えは○
 落ち葉は、炭素と水素と酸素などからできています。これに塩素が加って低い温度で燃えればダイオキシンが発生します。食塩のように塩素原子は自然界にも沢山あるのでダイオキシンが発生する可能性は充分にあります。

 水俣病のように汚染の原因が特定の工場である場合は、対策は簡単です。しかし、ダイオキシンの問題は、自分達が発生源であることが大きな問題です。ダイオキシンの問題を解決するためには、一人ひとりが気をつけないといけないのです。この辺に気付いてくれると良いですね。まあ、生徒の感想を読むとかなり手応えはありました。

<生徒の感想>
・ニュースでダイオキシンってたくさんやていたけど、あんまり気にしなかった。でも、こんなに大変なことなんだと思った。
・燃やすとダイオキシンが出るものが分かって良かったです。これから気を付けたいと思います。
・これ以上ダイオキシンでの被害を出さないためにゴミの分別収集など身近なことからやっていきたい。
・なんでペットボトルは別々に出さなくちゃいけないのに、サランラップなんかはOKなのかな?あと、コンビニなんかでも缶・ビン・燃えるゴミの3つでしょ? あれ、困ると思うんだよね。どうせなら完璧に分けちゃえば良いのに中途半端に甘いよね、日本は。 で、ダイオキシンがやばいのは思うんだけど
さ、HとかClとか書かれても意味が分からない。体内にあるのがかなりビックリ! 食べ物にあると食べられなくなるじゃん!
・ダイオキシンの発生が多くなることが心配です。私たちが将来ベトちゃんドクちゃんのような子供を産まないように、今から私たちができることをやっていこうと思います。例えばゴミはちゃんと分けて捨てたり、今、「地球やさしい」っていう商品も増えているから、そういうものを使ったりしたいです。ゴ
ミは、私たちが生きている限り絶対出てしまうものだから、なるべくリサイクルなどをして減らしていこうと思います。
・「ダイオキシン」とは良く聞くけれど、今まで意味が分からなかったので良い勉強になった。そして、とても危険なものということが分かった。けれど、その「ダイオキシン」を作っている自分達でゴミの分別など、解決しなければならない問題だと思った。
・スーパーでもらう袋をなくして、自分でカバンを持ってくる。
・実験したものすべてから塩素の反応が出ると思っていたけど、ポリエチレンの袋とペットボトルから出なかったので驚いた。 なぜ、ペットボトルを分類するかが気になった。 サランラップを電子レンジであたためて良いのか?
・とてもためになった。自分がどれだけ愚かなことをしていたか分かった。こんごからゴミを分別するように心がける。
・とても良く分かった。これからは、みんなが燃やしてもいいものと燃やしてはいけないものをちゃんと分ければいい。なんかに利用できるものは利用する。
・臭い。ビニールを燃やしたときに出る思いっきりきた。ドクちゃんベトちゃんはかわいそうだね。せっかく分離しても片方が死んじゃったんじゃ喜べないね。二心同体だったのに寂しいね。
・分別をきちんとする。条約(燃やしちゃダメ!!)を作って、厳しく取りしまる。北海道(札幌)では、ちゃんとやっている。
・ダイオキシンを発生させないために、ゴミを分別したり、スーパーでは自分で袋を持っていくようにしたり、必要最小限のビニールやプラスチックしか使わないように心がける。
・これからは、ダイオキシンを出さないために、ちゃんとゴミを分別しようと思う。ダイオキシンだけではなく、その他にも問題は沢山あって、いろいろ対応しなければならないけど、それは当然と言えば当然のことだから仕方ないと思う。”夢の島”も大変だし・・・。スパーに行ってもコンビニに行っても袋をもらわないようにすればいいと思う。
・臭い。なんかやばい臭いがした。ビニール類とかは、全部ダイオキシンが出ると思っていたけど、そうじゃなかったみたい。もっと科学が進歩したら、ダイオキシンが出ないのができるようになるかな? なるべくなら使わないのが良いんだけど、それじゃ困る。みんながちゃんと理解して、ゴミとかも分別をちゃんとして、頑張れば良いと思う。
・なるべく使った後でも使えそうなものは工夫して再利用できれば良いと思う。
・ゴミをなるべく少なくすれば良いと思う。
・全世界から塩素を消す。
・ごみの分別収集のときにちゃんと分けて入れる。
・一人ひとりがダイオキシンのことを良く理解し、ごみの分別収集など、みんなでダイオキシンの発生を少なくするように努める。
・自分達に関係ないとは考えずに、ダイオキシンやその他の環境問題についても考えるべきだと思った。今日、始めて知ったこともあった。

■参考文献
 ダイオキシンの本文については、「ダイオキシンの100の知識」の本を見ながら書きました。

http://www.yomiuri.co.jp/osaka/monosiri/ms0212.htm
 プリントに載せた構造式は、上記のホームページから引用しました。

http://www.ritsumei.ac.jp/kic/a06/kodomo/betotodoku.html
 ベトちゃんドクちゃんの写真は、上記のページから引用しました。B4に拡大して黒板に貼り付けました。近くで見ると粒子が粗いのですが、教室で使うには、それなりに効果があるみたいです。

■水俣病
http://www.yasuda.co.jp/environment/98s_2b.htm
 水俣病についてまとめてあります。「過去の事件に学ぶ」と題して、ちょっと手を加えて読み物資料として使いました。


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