身近な物質で電池を作ろう
神奈川県大磯町  1999.8.18

 身近なものを使って、いろいろな化学電池を作り、電子オルゴールなどを鳴らせましょう。コイン電池・スプーン電池・活性炭電池・充電式の電池・などの作り方や性能を紹介します。あなたは、自作電池でどんな電気器具をはたらかせることができるかな?

 


コイン電池
キッチンペーパーを10円玉より少し大きく切る。これに食塩水をしみ込ませて1円と10円ではさむと電池ができます。

デジタルテスターで電圧を測定
コイン電池は1個で0.5Vぐらいです

金属の違いを調べる
食塩をしみ込ませたキッチンペーパーの上にいろいろな金属を並べ、金属の組み合わせを変えて電圧をはかると、どんな金属の組み合わせが良いかがわかります。

電解質水溶液による違いを調べる
身近な物質には電解質が多くあります。どんな液が性能が良いかな?

どんな電気器具を動かせる?
液晶の時計や電子オルゴール、ポケットゲームも少ない電流で動かせます

スプーン電池
スプーンを食塩水で湿らせたキッチンペパーとアルミ箔で包んだもの

スプーン電池の電圧
電圧は0.56V、電流は0.3mAぐらいです

直列につなぐと液晶時計が表示
2個直列にすると時計や電子オルゴールもバッチリ動きます

活性炭電池
スプーンのまわりに活性炭を入れキッチンペーパー・アルミ箔・サランラップの順に包み、食塩水で湿らせると強力な電池ができます

活性炭電池の電圧
電圧は1.25V、電流は120mAぐらいです

銅とマグネシウムで強力電池
フィルムケースの中に銅線とティッシュで巻いたマグネシウムリボンを入れ、塩化銅とうすい塩酸を加えます

プラレールが動く
電圧は1.3V、電流は700mAぐらいあるのでプラレールも動きます

鉛のおもりで充電式電池
鉛のおもりを重曹の水溶液の中に入れ、乾電池3個で10秒程度充電すると電池ができます

極によって色が変化する
充電すると電極の色が変化します

乾電池を分解する
水銀を使っていないマンガン乾電池は、写真のようにして分解できます。アルカリ電池や他の種類の電池は危険ですので分解してはいけません。

乾電池の中味
亜鉛の缶の中に黒い粉や炭素棒が出てきます

これでも電池
人間も電解質です。ステンレスのボールとアルミの鍋を両手で持つとそれだけで0.5Vぐらいの電圧が生じます
電池の原理

 基本的には2種類の金属を電解質水溶液の中につけると電圧が生じ電池ができます。

 身近な液は、ほとんどが電解質水溶液です。人間の体も電解質です。いろいろな液で調べてみましょう。

 金属でできているものは、電極として使えます。備長炭や活性炭のように電流を通す物質は、金属でなくても使えるものがあります。いろいろな組み合わせを試して下さい。

 電流が流れると−極は、電気をおびた原子(イオン)になって溶け出します。塩水につけると鉄のくぎがさびるのも、電池ができているからなのです。

 

身近なもので電池を作ろう

懐中電灯、オモチャやゲームなど、日常生活の中では電池は無くてはならないものです。身近なものを使っていろいろな電池作りに挑戦しましょう。

■舌で作る電池 (電圧=0.55V 最大電流=0.06mA)

材料:+極=10円玉、 −極=1円玉、 電解質水溶液=ヒトのだ液?

<作り方>

10円玉と1円玉を良く洗って、舌で味をみましょう。1枚ずつ別々に舌に乗せても何も味がしませんが、10円玉と1円玉を2枚重ねてその境目に舌をくっつけると変な味がします。これは、電池ができて舌に電流が流れたからです。デジタルテスターで電圧を調べると、約0.55Vありました。
これは、1750年にドイツのズルツァーが行った実験です。実際には、銅板と亜鉛板を使いました。
1780年には、イタリアのガルバニが、銅と亜鉛板をくっつけて解剖したカエルの足につけると筋肉がけいれんしてピクピクと動くことを発見しました。さらに、1800年にはイタリアのボルタが銅と亜鉛版の間に食塩水をしみ込ませた布をはさんだ電池を作りました。
電池を作るには、銅とアルミニウムなどの2種類の金属と食塩水のような電解質水溶液(電流を流す水溶液)を組み合わせることが必要です。

■コイン電池 (電圧=0.52V 最大電流=1.8mA)

材料:+極=10円玉、 −極=1円玉、 電解質水溶液=食塩水

<作り方>

まず、キッチンペーパー(水を吸う紙なら何でも良い)を10円玉と同じぐらいの大きさに切ったものを用意します。次に、10円玉、濃い食塩水をしみ込ませたキッチンペーパー、1円玉の順に重ねると完成です。電圧計や電流計で確かめてみましょう。
これを次のように3つ直列につないでみましょう。
+:10円・食塩水・1円:10円・食塩水・1円:10円・食塩水・1円:−
このとき、食塩水をしみ込ませた紙どうしがくっつかないようにします。3つ直列につなぐと、ほぼ乾電池1個分の電圧(1.5V)が得られます。
実験してみると、この3つ直列につないだ電池で電子オルゴールを鳴らしたり、デジタルの時計表示させたりできました。針式の目覚まし時計も、秒針が少しピクピクと動きました。

■何でも電池1(いろいろな金属と電池)

金属の組み合わせを調べるために、食塩水をしみ込ませたティッシュペーパーの上にいろいろな金属を並べ、デジタルテスターの電極を2種類の金属に当てて電圧を調べました。

金属の組み合わせと電圧 電解質水溶液=飽和食塩水 (単位はV)

−極 +極 備長炭 スプーン 10円 鉄板 1円 亜鉛 マグネシウム
備長炭              
スプーン(ステンレス?) 0.37            
10円玉(銅) 0.48 0.10          
鉄板 0.61 0.29 0.17        
1円玉(アルミ) 0.98 0.63 0.51 0.32      
電池の缶(亜鉛) 1.22 0.86 0.76 0.56 0.26    
マグネシウム 1.86 1.48 1.39 1.18 0.88 0.62  
この実験結果の表から、+極にスプーン、−極にアルミニウムを使って、飽和食塩水の中につけると、0.63V位の電圧が生じることが予想されます。また、+極にスプーン、−極にマグネシウムを使うと1.48Vと乾電池の1.5Vに近い電圧が生じることが分かります。どんな種類の組み合わせでも電池ができますが、金属を組み合わによって電池の電圧が大きく変わります。自分で考えた電池を作るときには、なるべく電圧が大きくなるような金属を選びましょう。
授業で使う電圧計でも測定できますが、これよりも小さな値になると思います。これは、電圧をはかるときにわずかに電流が流れるからです。また、身近な金属は、いろいろな種類の合金が使われていたり、表面が違う金属でメッキされていたり、さびていたりしているものがあります。実際にあるもので調べてみると少し違った結果が出ると思います。

■何でも電池2(いろいろな電解質水溶液と電池)

身近な水溶液はいろいろなものが溶けているので、電流を流すものが多くあります。水に溶かしたときに電流が流れる物質を電解質といい、この電解質の水溶液を使うと電池を作ることができます。いろいろな水溶液に、銅とアルミニウムの電極を入れて電圧や電流の違いを調べてみましょう。電流は、デジタルテスターの+−の端子をそれぞれ銅板とアルミニウム板につないだときの値です。

いろいろな電解質と電池の性能 +極=銅板、−極=アルミ板、極板は2cm×2cm

電解質水溶液 電圧
(V)
電流
(mA)
電解質水溶液 電圧
(V)
電流
(mA)
飽和食塩水 0.48 1.2 アクエリアス 0.52 0.7
食酢 0.64 6.8 大根 0.62 0.3
しょう油 0.45 0.8 トマト 0.62 1.0
オレンジジュース 0.58 0.2 キウイ 0.43 0.2
水道水 0.51 0.3 人の口 0.52 0.2
電圧は、0.43〜0.64Vと大きな差はないが、電流は水溶液の種類によって0.2〜6.4mAと大きな差があります。大きな電流を流すには、酸性の食酢が一番です。また、サンポール(10%塩酸)のように強い酸性の液はもっと電流が流れると思われますが、扱いに注意が必要です。
果物・梅干し・ゼリー・歯磨きなどの水溶液も電池として使えます。いろいろなもので試してみましょう。
普通のマンガン乾電池では、最大で7A(7000mA)以上の電流が流すことができます。このように大きな電流を得られるといろいろな電気器具をはたらかせることができます。大きな電流を得るためには、水溶液の種類や電極の面積なども工夫する必要があります。

■いろいろな電気器具をはたらかせよう

自作電池でいろいろな電気器具をはたらかせてみましょう。電気器具によって必要な電圧や電流が違います。以下の表は、乾電池を使っていろいろな電気器具を使ったときに流れる電流を調べたものです。
いろいろな電気器具に流れる電流の大きさ 電源は乾電池を使用
電気器具 電圧
(V)
電流
(mA)
電気器具 電圧
(V)
電流
(mA)
デジタルの液晶時計 1.5 0.005 発光ダイオード 3.0 50
電子オルゴール 1.5 0.1 模型のモーター 1.5 120
針式の目覚まし時計 1.5 0.5 電車のモーター 1.5 300
液晶のゲーム 1.5 4 豆電球 1.5 400
デジタルの液晶時計や電子オルゴールのように少ない電流ではたらく電気器具は、次のように大きな電圧を得られる電池を作ればよいでしょう。
・電圧が得られるような極板の金属の種類を使う
・電池を2〜3個作って直列につなぐ
モーターや豆電球は、電圧だけでなく大きな電流を流す必要があります。電圧を大きくする以外に、次のようにして大きな電流が得られるように工夫もしましょう。
・大きな電流を得られるような水溶液を使う
・電池を並列にしたり、電極の面積を大きくする

■スプーン電池 (電圧=0.56V 最大電流=0.3mA)

材料:+極=スプーン、 −極=アルミはく、 電解質水溶液=濃い食塩水

<作り方>

スプーンをキッチンペーパーで包み、濃い食塩水でぬらし、さらにアルミはくで包む。このとき、スプーンとアルミはくが直接触れないようにします。
電気器具 1個 2個 電気器具 1個 2個
デジタルの液晶時計 × 発光ダイオード × ×
電子オルゴール × 模型のモーター × ×
針式の目覚まし時計 × 電車のモーター × ×
液晶のゲーム × × 豆電球 × ×

<応用編>

アルミの鍋とステンレスのお玉、表面を紙ヤスリで磨いたアルミの空き缶とステンレスのフォークなどいろいろな組み合わせが考えられます。また、アルミのかわりに、亜鉛メッキしたバケツを使うと電圧がもっと高くなるでしょう。

■活性炭電池 (電圧=1.25V 最大電流=120mA)

活性炭を使うと、大きな電流をとり出せるようになります。これは、活性炭には小さな穴がたくさん空いていて、表面積が大きいからかも知れません。また、スプーンだけの時よりも電圧が大きくなります。
材料:+極=活性炭とスプーン、−極=アルミはく、電解質水溶液=濃い食塩水

<作り方>

スプーンのと活性炭を入れ、二重にしたキッチンペーパー・アルミはく・サランラップで包み、中心の活性炭の部分に濃い食塩水を含ませる。サランラップの上から手で少し強く握ると大きな電流を流すことができます。
電気器具 1個 2個 電気器具 1個 2個
デジタルの液晶時計 発光ダイオード ×
電子オルゴール 模型のモーター
針式の目覚まし時計 電車のモーター × ×
液晶のゲーム × 豆電球 × ×

<活性炭のはたらき>

活性炭は、小さな穴がいっぱいあるので表面積が広く、多くの酸素を吸収しています。実は、この酸素が+のはたらきをしています。
活性炭や備長炭は、高温で焼いてあり、金属と同じように電流を流すことができます。がバーベキュウなどに使う炭では電流が流れません。備長炭に食塩水をしみ込ませたキッチンタオルとアルミはくを巻いて強くにぎるだけでも最大で600mAぐらいの電流を取り出すことができます。

■プラレール電車も走る強力電池 (電圧=1.3V 最大電流=700mA)

材料:+極=銅線、−極=マグネシウム、電解質水溶液=塩化銅+うすい塩酸

<作り方>

(1) マグネシウムリボンを20cmぐらい切り取り、一方の端を4cmぐらい残して2本の指に巻き付け、ティッシュペーパーで包む。
(2) 銅線を20cm程度切り取り、一方の端を4cmぐらい残して(1)のティッシュペーパーの上に巻き付ける。
(3) フィルムケースの中に10%塩化銅水溶液にうすい塩酸(12倍に薄めたもの)を少し加えた混合液を入れ、その中にAを入れる。

電気器具 1個   電気器具 1個  
デジタルの液晶時計   発光ダイオード  
電子オルゴール   模型のモーター  
針式の目覚まし時計   電車のモーター  
液晶のゲーム   豆電球  

【注意】使用した塩化銅の水溶液は、環境に悪いので、流しに流してはいけません。使用したティッシュといっしょに自然乾燥して、電池などと一緒にゴミに出しましょう。

■蓄電池 (電圧=1.54V 最大電流=156mA)

材料:+極=鉛のおもり、−極=鉛のおもり、電解質水溶液=炭酸水素ナトリウム

<作り方>

(1) フィルムケースに炭酸水素ナトリウム水溶液を入れ、その中に釣りで使う鉛のおもりを2つ入れます。このとき、2つの鉛がぶつからないように間に紙を入れましょう。
(2) 乾電池を3個直列につないだものを用意し、リード線で+−の極を鉛のおもりに接続し、10秒ぐらい充電する。

電気器具 1個   電気器具 1個  
デジタルの液晶時計   発光ダイオード ○数秒  
電子オルゴール   模型のモーター ○数秒  
針式の目覚まし時計   電車のモーター ×  
液晶のゲーム   豆電球 ×  

<応用>

実際の鉛蓄電池は、硫酸が電解質水溶液として使われています。充電すると+極の鉛が茶色く変色し、この物質が+極の役割をします。
鉛のかわりに2本の炭素棒を使って炭酸水素ナトリウム水溶液を電気分解をすると酸素と水素が発生します。このとき、スイッチを切った後、気体が着いたままの2本の炭素棒は電池としてはたらきます。水素と酸素から電気を取り出す方法は「燃料電池」と呼ばれ、水以外に有害な物質ができないので環境に優しい電源の一つです。

■乾電池のしくみ

普通の乾電池を分解すると、中から亜鉛の缶と炭素棒そして、その間に黒い粉が詰まっています。この黒い粉は、二酸化マンガンと炭素の粉を塩化亜鉛などの水溶液で練ったものです。この黒い粉の粒子が小さいほど表面積が大きく、大きな電流がとりだせることになります。
 
●参考文献
99青少年なための科学の祭典 P196 戸田 一郎 「電池の歴史を体験しよう」
99青少年なための科学の祭典 P177 佐藤 成哉 ほか 「活性炭電池を作ろう」
99青少年なための科学の祭典 P40 谷 俊雄 「釣りのおもりに電気をためる」
99青少年なための科学の祭典 P93 佐貫 隆夫 ほか 「マンガン乾電池をつくろう」

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