化学電池の探求実験
神奈川県平塚市 大住中学校  1999.11.15

 大住中学校で化学電池の探求実験を行いました。生徒が持ってきた金属や電解質などの材料を使って目覚まし時計などを動かしました。

 


コイン電池で電子オルゴール
直列につなぐと電圧が上がるよ

目覚まし時計は動くかな?
乾電池から取りだした炭素棒・亜鉛缶に
食酢を入れた電池

2種類の電池を直列に
上は弾丸・アルミ・食酢の電池
下は炭素棒・アルミ・食酢の電池

ヤッター! 動いたぞ!
左の電池で大きな時計が動きました

びん長炭電池の電圧は?
うまく動かないときは電圧や電流を調べる

モーターがビュンビュン
太陽電池用のモーターは22mA
程度で回りました

黒板に貼りだして内容を発表

どの班も頑張りました

 

【授業のようす】

 今回も、林田さんとTTを組みました。まずは、生徒が持ってきた材料を確認したところ、前回と同じようにほとんどの生徒がいろいろなものを持ってきました。電気器具によって電子オルゴール(初級)〜モーター(上級)などとくだらない話をして、電圧や電流を大きくするには、「濃い液」「直列・並列につなぐ」「面積を広くする」などを確認して実験に取りかかりました。(ちょっと前段長すぎた?)

   前時に十分な計画立てられなかったものの、生徒は夢中になって実験をしていました。強力な電池にするために、お酢を使うことはできるものの、いろいろなものを持ってきているので、同じ型の電池を直列につなごうとしても材料が足りなくてなかなかできない。(前時のようにスプーンを持ってこさせると良かったかな?)それでも工夫をして電子オルゴールまではどの班もクリアーしました。自分達が持ってきた材料で作った電池で、教室に使う大きな時計が動いたときには、歓声が上がりました。

   モーターを動かすことができた班は、備長炭や活性炭などを使った班がほとんどです。資料には活性炭を使った電池も書いてありますが、特に説明はしませんでした。活性炭を使うと表面積が飛躍的に上がる(1gで1000m2)のですが、金属ではないし、反応そのものも違ってきます。この辺のところが指導しにくいところです。(新指導要領では、「化学変化で熱や電流が取り出せる」ことをやるからこの辺は逆にやりやすいかも?)

   実験に熱中しすぎて、まとめの時間が足りなくなり、黒板に各班の自慢の電池を書いて貼りだしたのは、授業が終わったあとでした。(林田さんが後の授業でフォローするそうです)

   生徒は「失敗」をしながらも、あきらめずに、時間内で液や金属を変えるなどさまざまな工夫をしていました。現代の生徒は、日常生活における実体験が少なくなったと言われています。普段のマニュアル化した実験ではあまり体験することがない「失敗」をすることによって、新たな思考が生まれ、「生きる力」につながってくるのではないでしょうか? 「失敗」をして、回り道をすることが貴重な時間なのかも知れません。

   授業としては、時間配分やTTの分担、生徒への投げかけ方、発表やまとめ方、生徒の予想や思考など数々の反省すべき点があります。今後、授業を再検討するとともに次年度の研究に向けてあらたにスタートしていきたいと思います。  

【各班の作った電池】

1班:スプーン・アルミ・お酢&はさみ・アルミ・お酢を直列で電子オルゴール
   アルミ・ステンレス・人間 3人直列につないでデジタルテスター(0.8mA)
2班:亜鉛・炭素棒・お酢 1組で目覚まし時計
3班:亜鉛・10円・しょう油 1組で電子オルゴール
4班:アルミ・10円・お酢+レモン水 1組で電子オルゴール
5班:炭素棒・アルミとお酢(またはレモン水・ミカン汁・アスコルビン酸)で 電子オルゴール・モーター
6班:スプーン・アルミ・ワイン 1組で電子オルゴール
7班:備長炭・アルミ・お酢&スプーン・活性炭・アルミ・お酢を直列でモーター・液晶ゲーム
8班:10円・アルミ・発泡酒で電子オルゴール
9班:活性炭・アルミ・お酢&弾丸・アルミ・お酢を直列で大形の時計  

【自己評価】(提出27人)

・自分で材料を持ってきましたか?  1=1人、2=0人、3=2人、4=3人、5=21人
・班で協力して実験できましたか?  1=1人、2=1人、3=4人、4=3人、5=18人
・資料の冊子を参考にしましたか?  1=3人、2=3人、3=8人、4=9人、5=4人
・電池を作り、正しく配線できましたか?  1=2人、2=0人、3=6人、4=6人、5=13人
・実験結果を記録できましたか?  1=1人、2=4人、3=6人、4=7人、5=9人

【生徒の感想】(一部)
・どんなにやってもモーターがまわらなかったのでくやしい。
・持ってきたものでは、電流が流れず、結局、お酢でオルゴールだけを鳴らせた。
・ときどき電流をはかっていたけど、いつも0mAで電流が流れてなかったのがほとんどだった。
・いろいろな水溶液や物で電池を作ることができた!!
・モーターが回ったとき、本当に電池ができてすごいと思った。
・電子オルゴールが鳴るのに、とても時間がかかってしまった。もう少し、たくさん調べたかった。
・10円しかできなかった。
・けっこう電子オルゴールぐらいなら鳴っていたけど、モーターとなるとなかなか動かなかった。やっぱり10円だと面積が小さいから電流が小さいと思った。
・オルゴールしか鳴らなかったのが悔しかった。
・いろんな酸(レモン汁・アスコルビン酸など)で電池を作れてとても楽しかった。もっと変わった物でも作りたかった。
・ちょっと(お酢)臭かったけど、自分の持ってきたもので電池を作ることができて、モーターを回すことができたので面白かった。
・強いの(電池)を2つもつなげたけど、やっぱり電車が回らなかったのが悔しい。
・お酢は臭いけど、時計まで動くとはすごい。  

【感想を読んで思うこと】

・自分が持ってきたものを使って電池を作る → 教師が準備しすぎるのはマイナス
・自分で考えて電池を作る            → 親切なアドバイスはマイナス
・失敗を乗り越えて成功がある         → 苦労した経験が達成感につながる

  【今後の改善点】

・スプーン電池で通しては?

 スプーン電池を基本として、それを改良したりつなぎ方を変えたりすることによって探求活動をさせる。こうすると生徒がある程度予想を立てることができるし、他の班と条件の一部は共通になるので比較することができる。資料も簡単ですむし、準備の面でもずっと楽である。  

<生徒用の資料の案>

・授業の初めの説明を簡潔にする

 TTを組むなら、机間巡視をしながら個別にアドバイスできる。TTの役割分担ももう少し研究の必要がある。

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